宇宙ビジネス入門【起業家のビジョン】

宇宙
Q:宇宙ビジネスにおける起業家たちのビジョンを教えてください。

皆さん宇宙ビジネスと聞くと「自分とは関係のない業界のことだ」と思ってはいませんか?

実は宇宙ビジネスはロケットの打ち上げだけでなく、カーナビに利用されているナビゲーションシステムやグーグルマップなど私達の生活に非常に貢献していて必要不可欠な業界なのです。

前回の投稿では宇宙ビジネスのキープレイヤーを紹介しました。

今回は宇宙ビジネスの起業家たちのビジョンを紹介していきます。

イーロン・マスク

テスラの創業者でもあり、スペースXの創業者でもあります。

南アフリカ出身でスタンフォード大学を中退してZip2というIT企業を立ち上げました。
その後ペイパルの前進となるX.comを立ち上げイーベイに売却します。
以上の売却で得た資金で2002年にスペースXを創業しました。

TEDに出演した際にはイノベーションを起こすための思考法として本質的な真理を追究する物理学の重要性を説いており、「ネット以外の分野にも目を向けて欲しい」とも語りモノづくりへの情熱があるのがわかります。

現在スペースXは主に以下3種類の市場で打ち上げサービスを行っています。

  • ISSへの物資輸送サービス
  • 通信・放送衛星打ち上げサービス
  • 安全保障衛星打ち上げサービス

打ち上げサービスを多く受注できている要因は低コストにあります。
某米空軍センター長は「スペースXによる打ち上げコストは40%も安い」と発言しており、再利用ロケットの開発が進めばさらなる低コスト化を実現できるでしょう。

これらの実績を支えてきたのは開発/マーケティング/オペレーションの3分野です。

開発の分野ではファルコン/ファルコン9で部品の内製化/モジュール構造を導入し低コスト化を促進しました。さらに第1弾ロケットの再利用化にも成功しており、2017年に再利用ロケットによる打ち上げに成功しています。

マーケティングの分野では以下のような今までになかった手法に取り組んでいます。

  • ローンチマニフェストと呼ばれる打ち上げ実績と計画の発表
  • 打ち上げにかかる標準的価格の公開
  • 打ち上げ時などの動画公開

オペレーションの分野では打ち上げ頻度の向上に取り組んでおり、将来的には2週間に1度の打ち上げを目指しています。そのためには射場を複数運用する必要があり、2017年時点で既にケープカナベラル空軍基地/ケネディ宇宙センター/ヴァンデンバーグ空軍基地の3か所を運用しています。

進化を遂げているスペースXは狙っている市場が2つあります。

1つ目がISSへの宇宙飛行士輸送サービスです。
NASAが民間企業による有人輸送サービスの実現を目指しており、2017年時点ではスペースXとボーイングが受注獲得を目指しています。

2つ目は火星です。
イーロン・マスク「人類が複数惑星に住む世界を創る」と語っており、再利用ロケット/射場/顧客開拓全てが火星につながっているとも言われています。

ジェフ・ベゾス

Amazon創業者のジェフ・ベゾスは宇宙ベンチャーのブルーオリジンを2000年に創業しており、スペースXよりも早い時期に創業しています。

ジェフ・ベゾスのビジョンは以下のような発言に表されてます。

「数百万人の人が宇宙で暮らし、働けるようにしたい。宇宙までも見据えた文明にしたい。」

「限られた地球資源のためにも重工業は地球外に移行し、地球は住居用または軽工業用のための地域とすることを考えている。」

「重要なのは現状よりもずっと抵コストで宇宙へ行けるようになることだ。」

ビジョン達成のために具体的に以下ようなことに取り組んでいます。

  • 垂直離着陸式/高度100kmの再利用ロケット「ニューシェパード」の開発
  • 大型ロケット「ニューグレン」の開発
  • BE-4エンジン」の供給

リチャード・ブランソン

リチャード氏は2004年にヴァージン・ギャラクティックを創業しました。

宇宙船「スペースシップ2」の開発を始めたのが創業の起源でした。
2014年には墜落死亡事故がありましたが、それでも改良を続け6人が搭乗できる有翼宇宙船「ヴァージン・スペースシップ・ユニティ」を開発し2016年には約3時間の飛行を行いました。

ヴァージンでは小型衛星の打ち上げサービスも手掛けており、空中発射ロケット「ランチャーワン」の開発を進めています。このロケットでは衛星インターネット網構築を目指すワンウェブの小型衛星を搭載する予定もあります。

小型衛星の打ち上げサービスはロケットラボなど他多数の競合企業が存在し、今後の動向に注目していきたいところです。

ピーター・ディアマンディス

Xプライズ財団/プラネタリー・リソーシズ/ゼロ・グロビティ/ISU(国際宇宙大学)/シンギュラリティ大学など宇宙関連の営利・非営利団体を数多く創業している人物です。

アポロ計画やドラマ「ストートレック」と出会い「複数の惑星に人類が住めるようにしたい」という夢を幼少の頃に抱きました。大学で航空宇宙工学をを学んだ後、アポロ計画から先に宇宙産業が進まない状況を目の当たりにして、政府主導の宇宙開発の限界と民間産業の必要性を認識しました。

宇宙産業民としてツーリズム/宇宙資源探査に可能性を見出しており、この2分野において今後も注力していくでしょう。

グレッグ・ワイラー

ビジョンは「グローバル情報格差を0にする」ことです。

グレッグ・ワイラーはワンウェブのCEOとして衛星インターネットインフラ構築を目指しており、他宇宙産業のビジョナリーと異なるのは地球で暮らす人々を見据えていることです。

「世界にはインターネットに接続できない人が40億人もいる。その人々に安くて高速なインターネットのインフラを提供するのが私達の使命だ」とも語っています。

同氏の凄いところは高いビジョンを掲げた上で実現のための契約/投資を獲得できていることころです。コカ・コーラ/インテルサット/ヴァージン・ギャラクティック/ソフトバンクなど名だたる企業からの資金調達を実現しています。

衛星の開発/製造に関してはエアバスと組み、週15機のペースで衛星を量産できる世界初となる衛星自動量産工場を建設予定となっています。

マーク・ザッカーバーグ

ビジョンは「ドローン、衛星、レーザーを活用してネットインフラ構築」をすることです。

SNS最大手のフェイスブックを率いる同氏は地球の隅々までインターネットインフラを普及させることを目標に掲げています。
この目標に向けてノキア/エリクソン/クアルコム/サムスン電子などと協力し非営利団体「Internet.org」を立ち上げました。

衛星だけでなくドローン/レーザーの新技術を用いて目標達成へ前進していく同氏の躍進には今後も注目していきたいです。

スティーブ・ジャーベソン

投資家でありスペースX、プラネットに投資を行い各社のボードメンバーでもあります。

スペースXがロケット打ち上げを3回連続で失敗して窮地に立たされていた時に、陰で支えていたのが彼だったそうです。

同氏は昨今破壊的変化が起きている産業領域として「ロボット&AI」「輸送・自動車」「製造業」「製造業」「バイオ技術」「農業」「宇宙」をあげており、「宇宙」においては「光ファイバーが整備された後にネット・クラウドが出てきたように、宇宙へのアクセスコストが下がれば大きなイノベーションが生まれる」と宇宙アクセス革命の意義を見出しています。

衛星事業においては「データインテグレーションとアプリケーションの勝負になる」「衛星データ解析は日々の低分解画像による変化抽出と高分解能画像解析の組み合わせなる」と語っており、可能性を見出しています。

エアバスグループ

大手航空企業も宇宙ビジネスのキープレイヤーであり、エアバスは巨大な宇宙ビジネスコングロマリット(複合企業)です。エアバスの中で宇宙事業を担当しているのはエアバス・ディフェンス&スぺ―スという会社です。

エアバスは世界1の衛星メーカーであり、通信衛星事業者からの衛星製造と打ち上げサービスの受注を拡大させています。

一方で新宇宙分野ではワンウェブと連携し、衛星インターネット事業の衛星を自動量産製造する工場をフロリダに建設しています。

エアバスのような伝統機的大手企業と新興企業の攻防が本格化していき、宇宙産業全体が発展しく予感がしますね。

以上で宇宙ビジネス【起業家のビジョン編】の紹介は終了です。

実は筆者が宇宙関係の業界で働いていて、業界知識の獲得をするとともにもっと多くの人に宇宙ビジネスについて知ってもらいたいと思い今回の投稿にいたっています。

宇宙ビジネスの進歩は目覚ましく、投稿した内容は2017年出版の書籍を参考にしている(以下参照)ので最新の情報を完全に提供できているわけではありませんが、少しでも宇宙ビジネスについて関心を持っていただければ幸いです。

もし宇宙ビジネスについてもっと知りたい!という方はぜひ以下書籍↓を購入して読んでみてください!

次回はアメリカの宇宙ビジネスエコシステムについて紹介していきます。

それではSee you next time!!

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