宇宙ビジネス入門【米国の宇宙産業エコシステム】

宇宙
Q:アメリカの宇宙産業はどのように成り立っているのか気になります。ぜひ教えてください!

皆さん宇宙ビジネスと聞くと「自分とは関係のない業界のことだ」と思ってはいませんか?

実は宇宙ビジネスはロケットの打ち上げだけでなく、カーナビに利用されているナビゲーションシステムやグーグルマップなど私達の生活に非常に貢献していて必要不可欠な業界なのです。

前回の投稿では宇宙ビジネスの起業家たちのビジョンを紹介しました。

今回は宇宙産業が活発なアメリカの宇宙産業のエコシステムを紹介していきます。

法整備/政策

法整備

アメリカの宇宙産業の法整備は大まかに以下のような流れがありました。

  • 1984年:商業宇宙打ち上げ法
  • 1992年:陸域リモートセンシング政策法
  • 1994年:大統領令で偵察衛星技術の一部民生転用許可
  • 2015年:商業宇宙資源開発を認める法案が制定

商業宇宙政策

従来国家プロジェクトだったものを民間企業に担ってもらうようになったきっかけのプログラムがCOTS(商業軌道輸送サービス)CRS(商業補給サービス)でした。

また2010年オバマ政権時代に国家宇宙政策が作成され、以下のような商業宇宙政策に対する基本的考え方が明記されています。

  • 官需であっても市場から調達可能な場合はできるだけ商業サービスを利用する
  • 市場から調達するためであれば従来ない方法も積極的に採用/模索する
  • 賞金を用いて宇宙産業の技術革新/起業を活発化させる
  • 宇宙活動の承認は迅速に行う

テクノロジー

テクノロジーの分野では従来からの航空宇宙業界の技術IT産業/ロボティクス産業の新技術が融合することで宇宙産業を盛り上げています。

小型量産衛星の設計/製造

アジャイル開発第4次産業革命の影響、3Dプリンタの活用などにより衛星自動製造工場で衛星の量産体制が整えられてきています。プラネットでは1週間に15機生産する計画が立てられています。

またこれらの手法が大型衛星に反映されると衛星メーカーとしては更なる差別化を図ることが可能になります。

衛星ビッグデータ蓄積/管理/解析

衛星数が増えたことによりデータ量が増加しました。データ量が増加したことによりデータ管理&蓄積のプラットフォーム(AWSなど)に対する需要が増えてきています。

データ解析はオービタルインサイト/フェイスブックなどが機会学習/人工知能を活用して物体をカウントするサービスをスタートさせています。

宇宙探査ロボット開発

主にNASAがリーダーとなりながらも着陸船無人走行ローバーの開発が進められています。

リスクマネー

2015年の宇宙ベンチャーへの資金流入額25億ドル以上とも言われています。年々増加する資金流入は主に以下のような人・団体によるものになります。

ビリオネアの自己投資

IT起業をして成功させたイーロンマスクジェフベゾスなどが良い例です。

民間のエンジェル投資家

スペース・エンジェルズは少数精鋭で200人からなる団体で、投資承諾率5%程度の厳しい審査を行います。主に初期投資がメインです。

ベンチャーキャピタル

資金だけでなく様々な支援を行うアクセレレーターも増えており、スターバーストは投資家とのつなぎ役になったり、オフィス提供/戦略コンサル/メンタリングなども行っています。

大手企業

有名どころだとGoogle/ソフトバンク/インテルサット/エアバスなどがその例です。

プラットフォーム

カンファレンス

  • スペースシンポジウム(毎年4月開催/全米最大の宇宙カンファレンス/半数近くが軍関係者)
  • キーノートスピーチ(ジェフベゾスが登壇)
  • ニュースペースカンファレンス(毎年6~7月開催/シリコンバレー中心/民間宇宙ビジネス関係者を集める)
  • スペース2.0(シリコンバレー/抽象論より技術論/IT企業も)
  • スモール・サット・カンファレンス(シリコンバレー)

メディア・プロフェッショナル

  • スペースニュース(最大手)
  • ニュー・スペース・グローバル(ニュースペース分野にフォーカス)

業界団体

  • AIA(米航空宇宙工業会/全社300社以上/政府予算・規制・政策について提言&報告を行う)
  • CSF(打ち上げ特化団体)

産業クラスター

ベイエリア(シリコンバレー/サンフランシスコ/ロサンゼルス)

  • Google
  • Apple
  • facebook
  • NASAエームズ研究所
  • メイドインスペース(ISSに3Dプリンタを設置している)
  • ispace
  • シンギュラリティ大学
  • オービタル・インサイト
  • アストロ・デジタル
  • ムーン・エクスプレス(Google・ルナプロジェクト)
  • ニュースペース・カンファレンス
  • スペース2.0
  • スモール・サット・カンファレンス
  • プラネット
  • スパイア
  • クライメート・コーポレーション

シアトル

  • Amazon
  • スタバ
  • Microsoft
  • 旧ボーイング
  • ブルーオリジン
  • プラネタリー・リソーシズ

テキサス

  • NASAジョンソン宇宙センター
  • エリクソンモビール
  • フィリップス66
  • アメリカン航空
  • AT&T
  • テキサス・インスツルメンツ
  • 各社の発射場/開発拠点/施設

実は筆者が宇宙関係の業界で働いていて、業界知識の獲得をするとともにもっと多くの人に宇宙ビジネスについて知ってもらいたいと思い今回の投稿にいたっています。

宇宙ビジネスの進歩は目覚ましく、投稿した内容は2017年出版の書籍を参考にしている(以下参照)ので最新の情報を完全に提供できているわけではありませんが、少しでも宇宙ビジネスについて関心を持っていただければ幸いです。

もし宇宙ビジネスに興味も持っていただけたら、↓ぜひ本書を購入してみてください!!

次回はアメリカ以外の世界各国の宇宙ビジネスについて紹介していきます。

それではSee you next time!!

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