Q:世界中の各国はどのように宇宙ビジネスを展開してきているのでしょうか?
皆さん宇宙ビジネスと聞くと「自分とは関係のない業界のことだ」と思ってはいませんか?
実は宇宙ビジネスはロケットの打ち上げだけでなく、カーナビに利用されているナビゲーションシステムやグーグルマップなど私達の生活に非常に貢献していて必要不可欠な業界なのです。
前回の投稿ではアメリカの宇宙産業のエコシステムを紹介しました。
今回は世界各国の宇宙ビジネスを紹介していきます。
以下世界で宇宙ビジネスを牽引する各国のメインプレイヤーやメイン事業を紹介します。
欧州

ESA(欧州宇宙機構)
欧州全体で活動する半官半民の宇宙機関で予算規模は40億ドル越えます。
観測プログラム/航行測位プログラム/打ち上げプログラムを遂行しています。
EU(欧州連合)
欧州独自の測位衛星システム「ガリレオ」、ESAと共同推進している地球観測プログラム「コペルニクス」などから得たデータの利活用をしています。
欧州産業界
エアバスグループ/タレス・アレニア・スペースなどがメインプレイヤーとなっています。
ルクセンブルク

SES
1985年にPPP(官民パートナーシップ)で設立し、2000年前後~アジア/ラテンアメリカなどへグローバル事業展開を行っています。
静止衛星軌道上に通信衛星を50機ほど運用中であり、2015年の売上高は20億ユーロで衛星通信事業では世界最大級となっています。
SpaceResources.lu
国として「宇宙探査および宇宙資源の欧州におけるハブ」となることを目指し、イニシアチブグループを立ち上げました。
スペースフォーラムの開催や2016年には宇宙カンファレンスを立ち上げています。
イギリス

ベンチャー支援
テックシティというベンチャー集積地が作られ、Google/facebook/シスコなど大手IT企業も拠点を構えます。
カタパルトというイギリス独自の起業家支援センターも立ち上げるなどベンチャー支援に力を入れています。
投資喚起
Harwell Campusを活用し、世界各国から7年で70社の誘致に成功しました。
自国企業にこだわらないのがイギリス流です。
共同開発
パキスタン/南アフリカ/ポルトガル/チリ/アルジェリア/ナイジェリアなどの衛星開発後進国との共同開発&人材育成にも注力しています。
クライド・スペース
小型衛星コンポーネントメーカーで、世界の小型衛星プロジェクトの約40%にHWを提供しており、売上の90%以上は海外になります。
サリー・サテライト・テクノロジー
小型衛星分野の世界最大手です。
民生電子部品を活用した低コスト/短期間開発/地上設備の自動設計などが強みです。
地球観測衛星分野に注力しており、重量100kg×5機で地球観測を行い、災害監視/土地利用調査に活用しています。
インド

ISRO(インド宇宙研究機構)
アポロ11号が月面着陸した1969年に設立されました。
総予算は1500億円弱で日本の宇宙国家予算の約半分に過ぎませんが、職員数は18,000人とJAXAの約10倍になります。
「低コスト化」と「各国とのコラボレーション」が特徴的で、ロシアとは伝統的に友好関係を持ち、欧州とは1980年ごろより協力関係にあり、アメリカとは2005年に宇宙科学を含む科学技術協定を結びました。
また国内最高峰の大学、IIT(インド工科大学)とも協力して開発等を行っています。
アクシアム・リサーチ・リボ
インドを代表し、チーム・インダスとしてGoogleルナXプライズに参加しました。結果的に賞を受賞しています。
ドゥルバ・スペース
コストを1/10程度に下げ、開発・製造期間を18カ月に抑えるなど徹底したローコストオペレーションを目指しています。
事業ドメインは10~100kgの小型衛星としています。
中国

典型的な国家主導型の宇宙開発をしており、以下のような組織があります。
- 国家航天局:民事&商業分野
- 中国航天科技集団公司(CASC)
- 中国航天科工集団公司(CASIC)
- 中国科学院:科学分野
- 人民解放軍:安全保障分野
5年に一度宇宙開発全体の方向性を定める宇宙白書を発表しており、2017年時点のものでは2018年に月面探査、2020年に火星探査機打ち上げを計画していました。
以上で宇宙ビジネス【世界各国の宇宙ビジネス】の紹介は終了です。
実は筆者が宇宙関係の業界で働いていて、業界知識の獲得をするとともにもっと多くの人に宇宙ビジネスについて知ってもらいたいと思い今回の投稿にいたっています。
宇宙ビジネスの進歩は目覚ましく、投稿した内容は2017年出版の書籍を参考にしている(以下参照)ので最新の情報を完全に提供できているわけではありませんが、少しでも宇宙ビジネスについて関心を持っていただければ幸いです。
もし宇宙ビジネスに興味も持っていただけたら、↓ぜひ本書を購入してみてください!!
次回は日本の宇宙ビジネスについて紹介していきます。
それではSee you next time!!
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